多くの人が、豊かな香りと味わいを楽しみながら、朝を一杯のホットコーヒーで始めます。しかし、そのコーヒー豆があなたのカップに届くまでに、どのような旅路をたどっているか考えたことはありますか?コーヒー豆のライフサイクルは、熱帯の農園で育ち、私たちが見慣れた大好きな豆へと姿を変えるロースタリーへ運ばれるまでの、驚くべき航海です。さあ、この旅路をたどりながら、それぞれのステージを詳しく見ていきましょう。
1. 栽培
すべてのコーヒー豆の物語は、その栽培から始まります。コーヒーノキ(Coffea)は熱帯性の常緑低木で、主に赤道地帯の高地でよく育ちます。代表的な種はアラビカ種とロブスタ種の2つで、それぞれにまったく異なる味わいの特徴があります。
コーヒーの木はおよそ3〜4年かけて成木となり、「コーヒーチェリー」と呼ばれる実をつけ始めます。通常、1つのチェリーの中には2つの種子が入っており、これが私たちがよく知るコーヒー豆になります。しかし、木を植えて待っていればよいというほど単純ではありません。農家は剪定や施肥を行い、害虫や病気から木を守るなど、常に細やかな管理を続けなければならないのです。
2. 収穫
収穫は、コーヒー生産の中でも特に労力を要する工程の一つです。多くの産地では、コーヒーチェリーは一斉に熟すわけではありません。そのため、完熟したチェリーだけを選んで手摘みする必要があり、非常に細かい注意と手間のかかる作業になります。
コーヒーの収穫方法には大きく分けて2つあります。枝についている実を一度にすべて収穫するストリップピッキングと、完熟した実だけを手摘みするセレクティブピッキングです。後者は時間と手間がかかりますが、そのぶん高品質な収穫が期待でき、私たちのようなスペシャルティグレードのコーヒーには、この方法が好んで用いられます。
3. 精製処理
収穫後のコーヒーチェリーは、腐敗を防ぐためにすばやく処理する必要があります。目的は、チェリーから豆を取り出すことです。代表的な方法として、乾燥式と水洗式の2つがあります。
乾燥式は最も古いコーヒー精製方法で、収穫したチェリーを太陽の下に広げて乾燥させます。水分量が目標値まで下がったら、機械で外皮を除去し、豆を取り出します。
ウォッシュト(湿式)精製では、収穫後すぐに果肉を取り除き、その後、水を満たしたタンクで発酵させます。発酵によって残った果肉が分解され、その後に豆を洗浄して乾燥させます。
4. 精製と選別
乾燥を終えた豆は、グリーンコーヒー(生豆)と呼ばれます。ここで最後に残った乾いた果肉や殻を取り除くために脱殻され、その後サイズや重量に基づいて選別・グレーディングされます。害虫によるダメージなど欠点のある豆は、この段階で取り除かれます。
5. 輸出
精製を終えた豆は、いわゆる「グリーンコーヒー」と呼ばれる状態になり、ジュートやサイザル麻の袋に詰められ、輸出用のコンテナに積み込まれます。この段階で、焙煎所である私たちの出番となります。私たちは、品質とトレーサビリティを確保するため、農園や生産者組合から直接豆を仕入れています。
6. 焙煎
焙煎こそが、魔法が起こる瞬間です。ここで、生豆は私たちが挽いて抽出する茶色い豆へと姿を変えます。焙煎は非常に繊細なプロセスであり、そのプロファイルは最終的なコーヒーの味わいに大きな影響を与えます。
東京のロースタリーでは、豆本来のポテンシャルを最大限に引き出すため、焙煎プロセスを細かくコントロールしながら、色合い・サイズ・フレーバープロファイルを決定していきます。熟練のロースターが常に豆の状態を見守り、温度や焙煎時間を微調整することで、ロットごとの個性を際立たせています。
7. グラインドと抽出
そして最終的に、焙煎されたコーヒー豆があなたの元へ届きます。コーヒーを抽出するには、豆を使用する抽出器具に合わせた粒度に挽く必要があります。挽き目の大きさは抽出プロセス、ひいてはコーヒーの味わいに大きな影響を与えます。
こうして、どこか熱帯の農園で木になっていたコーヒーチェリーは、世界を巡る緻密なプロセスと丁寧な焙煎を経て、ついにあなたのカップへとたどり着くのです。

一粒のコーヒー豆の旅路は、世界中の人々が力を合わせて、あなたの大好きな一杯を生み出していることの証です。次に朝のコーヒーを口にするときは、その一杯があなたの元に届くまでの長く魅力的な旅に、ぜひ思いを馳せてみてください。そして、もし東京にお越しの際には、ぜひ私たちのロースタリーを訪れて、この変化のプロセスを実際にご覧ください。